21世紀少年★回遊記

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もう一つの世界…
それは日が沈んだ後の夜の世界

［青春編］


夜の8時に不良少年Aから呼び出しの電話があった

指定された場所へ行くと、見たことのない少年が一人待っていた

「ガジラさんですか？」

「はい。そうです」

「ついて来て下さい」
というので、少年の後をついてゆくと、裏通りの飲み屋街へと進んで行った

飲み屋なのか民家なのか分からないような家に入った
玄関には沢山の靴が脱ぎ捨てられていた

「二階へどうぞ」
と言うので、空いてる隙間に靴を脱ぎ、階段を上った
途中、タバコの匂いに混じってシンナーの匂いがした
「ちょっとヤバイかな…」と思った

二階に上がると、そこはまるで宴会場のように、なんの家具もなく、ただ広い部屋だった

電話をかけてきた不良少年Aがウイスキー片手に「よー」と手をあげ近付いて来た

「実はよう。お前さ、頼みあるんだズ。ちょっと、こっちさ来て」

と言うので奥の方へと行くと、大きな濃紺の布が広げてあった

「こいっちゃ(これに)蛇の絵描いでけねが(描いてくれないか)」

「蛇の絵？なして(なんで？)」

「暴走族つくったんだズ」

「ほー」

「ほんで(それで)今度の土曜の夜、月岡神社で初集会すんだズ」

「へー」

「こいズそん時、持っていぐ旗なんだ」

「んだの」

「んだがら、カッコイイぐ描いでけねが」

「あらー責任重大だベシタ」

「んだよ」

という事で、急に暴走族発足の片棒を担ぐ事になってしまったのだった

「ところで、なんていう名前なの？」

「えんまく」

「えんま君？」

「違うズ！(怒)閻魔苦だズ」

「ふーん」(よく考えるものだ)

字は習字の上手い奴がいるからというので、絵だけなので1時間くらいで描き終え、解放された

ヤバイと思ったシンナーの匂いは、プラカラーの匂いでした


しばらくして

電車内であの不良少年Aに会った

「おー！どうだった初集会は？」
と聞くと

「集まった途端警察(サツ)に囲まれて終わってしまった…」

「で、旗は？」

「没収」

「んだのが…」


なぜかその時
一度でいいから風になびく蛇を見たかったなぁと、少しだけ悔やんだのでした
  

毎年9月は八幡神社のお祭り
なんと3日間もある年間で最大のイベントだ

いつも遊んでいる広い境内が異空間に変わる3日間

その中でもデーンと構えるのが見世物小屋だった

いつもはお化け屋敷なのだが、何故かその年だけは違っていた

忘れもしない小学5年の年だ

「親の因果が子に移り〜」とオドロオドロとしたアナウンスが、スピーカーから流れる

小屋の上に掲げられた大きな看板には、実に生めかしい女性と、それを取り巻く大蛇の絵

「な、なんだコレは！」

当時の上山は温泉街という事もあって、新湯通りには大人の社交場が点々とあった

そんなちょっとだけHな環境で育った私も、お祭りに突然出現した【蛇女】にはビビった

一応、入場料の所に【小人】とあるので、子供も観れるみたいだ

「おっかないけど…み、みでみっだい…」
さすがに一人では恐かったので、祭りに来ている友達を見つけては、片っ端から声をかけまくり誘った

しかし誰もがビビって一緒に入ってくれる友はいなかった…

それでも諦めきれない私は、次の日も誘いまくった

そして最終日

もうこれを逃したら二度と観れないかもしれない…

恐さよりも好奇心がうわまった

ドキドキしながら料金を払い中へ入った

中には沢山の大人達がいた

その隙間から舞台を覗いた

舞台にはニワトリの入った籠が置かれてあった

しばらくすると、舞台の袖から白い衣を身に付けた長い黒髪の女性が、身体をくねらせながら四ん這えで現れた

「あ、あれが蛇女か！」
でも、どう見ても普通の人にしか見えないが…

で、あのニワトリはなんなんだ？

「ぐげぇぇぇ〜」


「ぎゃぁぁぁ〜」


「おぇぇぇぇ〜」


「……………」


「さあさあ！お帰りは、あちら〜」
と急き立てられるように出口へと追いやられた

呆然としながら、ふと振り返えると、入り口からウチのジイちゃんが入って来るのが見えた

血は争えないな…
と子供心に思った

?????????★

2年くらい前にネットで【蛇女】と検索した時は2件しかなかったが、今回検索したところ、山の様な件数がヒットした

なんと19歳の小雪さんという山形の月山の麓出身(ほんとかどうか…)の後継者ができたらしく、盛り上がっていたのだ


見世物小屋という異空間化した昭和がまだ健在し、新たに盛り上がっている事に感動をおぼえずにはいられなかった