もう一つの世界・四夜
七日町通りから西に入る道沿いに、昼間は喫茶で、夜はスナックの
【ペーパームーン】というお店があった
黒一色で統一された店内は実にカッコ良く
私を含めて5〜6人の仲間のたまり場だった
そのお店は、25歳くらいのママと、20歳のひさちゃん、二人でやっていた
今思うとひさちゃんは、私より3〜4歳しか違わないのに実に大人っぽい感じの女性だった
学校帰りにちょくちょく行ってるうちに、私は次第にひさちゃんに淡い恋心を抱いていった
しかし、こんな心情を仲間に語ろうものなら、お節介好きの連中の格好の餌食になるのは分かっていたので、誰にも言わずに黙っていた
ところが、さすが商売柄?ママに気づかれてしまった
ある日
カウンター越しにママと二人っきりの時に
マ:「ガジラさんって。もしかして、ひさちゃんのこと好きなの?」
と聞かれた
ガ:「エッ!ああ……あ、はい」
マ:「ひさちゃん彼氏いないって言ってたよ」
ガ:「あや。そういうんじゃなくて…あ…」
マ:「今度、私が機会を作ってあげるからね」
ガ:「そ、そんなぁ…はい。お願いします…」
それからしばらくしたある日
もう12月だというのに、カウンターでアイスコーヒーを飲んでいると
ママが唐突に
マ:「あっ。そう言えば、ひさちゃんってルパン(三世)好きなんだっけよねぇ」
と言い出した
ひ:「えっ?はい」
と、少し照れながら、ひさちゃんが応えた
マ:「あのさぁ。今、映画館でやっているルパンのチケットお客さんに貰ったんだけど、ひさちゃん観に行かない?」
ひ:「えっ!」
マ:「あっ!ガジラさんもルパン好きだって言ってたわよねぇ〜」
(ウインク)
(いや、一度もそんな事は言った覚えがない)
ガ:「あ、はい」
マ:「丁度二枚あるんだぁ〜二人にあげるから、二人で観に行ってらっしゃい!」
ひ:「えっ」 ガ:「エッ」
(ほぼ同時)
で
〜つづく
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